本日はとても悲しいお話から始めなくてはいけません。
サイト改修後、最初の記事がこのような内容になること、
特に私たちが最も力を入れたいこのカテゴリでの第一歩が、悲しみのお知らせになること。
ただただ残念でなりません。
けれども、これは私たちが、技術を未来につなぐために、
「書き残さなければならないこと」だと感じています。
7月2日、また一人、優秀な機械直しが静かに旅立たれました。
「ただ部品を新品に交換して直るなら部品交換屋さんじゃないか。もちろん、そういう時もある。けれど、本来の修理というのはそうじゃない。自分の頭と腕を使って、あるもので直すんだ。」
これは、私が一番印象に残っている言葉です。
引退後も、ひ孫さんのおもちゃが壊れれば、音の鳴らないおもちゃを手に、テスターを引っ張り出して来て、直してあげていた。
「機械直しも、夫婦関係もとにかく我慢が大事なんだよ。」
そんな冗談を言って、クシャッと笑う姿が、今も目に浮かびます。
「どうやって直したんですか?」と聞けば、
「ただ外して、あったところに戻しただけだよ。」と飄々と答える。
でも実は、分解前にしっかりと印を入れ、細かく確認しながら進めていったことも知っています。
そして、機械直しを志す人にはまず、「手を見せてみろ」というのが口癖でした。
大きくて、指の太い手を見ては、
「いい手だ。おれと同じ機械直しの手だな。」と、
本当に嬉しそうに笑っていたのが忘れられません。
手は、その人の生き方や覚悟を表すものだと感じていたのかもしれません。
機械を語る時の真剣な横顔と、ゴルフや麻雀を語る時の楽しそうな笑顔──
そのすべてが、今も色鮮やかに思い出されます。
R .I .P . 克昌さん
あなたの技術と生き方は、私たちに多くのことを教えてくださいました。
その歩みと人柄は、これからもずっと私たちの胸の中に生き続けます。
そして、ここからが大切なことです。
現役で機械に向き合う皆さんに、私は伝えたい。
「技術は、消える。」
それは、誰かが伝えなければ、あっけなく途絶えてしまうものです。
どんなに優れた技術も、心意気も、黙っていれば消えていく。
だからこそ、学んだ人は教えなければならないし、
教えを受けた人は、いつか渡していかなければならない。
それが技術屋の「つとめ」ではないでしょうか。
私たちも克昌さんから教わった「機械直しの心意気」を責任を持って次の世代に伝えていきます。
今を生きる私たちが、その想いを繋いでいくことこそが、何よりの恩返しだと思っています。
そしてまた、克昌さんの背中を思い出しながら、
今日という1日を、ただの「作業」で終わらせず、
明日からまた、技術を磨き、考え続け、そして未来へと渡していきます。
克昌さん、私たちに良くしていただき本当にありがとうございました。
どうか安らかにお眠りください。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
2025.7.4 Medley Works 一同
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