単糸・双糸・撚糸とは何か│糸の構造で性能はここまで変わる

繊維知識

はじめに

前回の記事では

綿がどのようにして糸になるのか

つまり

「紡績の流れ」

を解説しました。

そしてその記事の、最後に触れたのが

「撚糸工程」です。

ここで重要なのは、

糸は「1本で完成」ではない

ということです。

実は糸には

・単糸

・双糸

・撚糸

といった

「構造の違い」があります。

そしてこの構造が糸の性質を大きく変えます。

補足説明

ここで少し補足です。

ネットで「単糸・双糸・撚糸」と調べると

とてもわかりやすい図や写真がたくさん出てきます。

ただ、それらの多くは

”見た目(外観)”を中心に解説されたものが多いのも特徴です。

そこでITomapでは

”中身(断面構造)”に注目して

糸の”中身の構造そのもの”

を軸に、解説していきます。

図解:単糸・双糸・撚糸の全体像

図解:全体像

この図から分かるように、糸は本数と撚りによって構造が変わります。

つまり糸は1本で完結するものではなく、組み合わせによって性能が変わる素材です。

単糸とは│すべての基本になる糸

単糸とは

”1本の繊維束を撚って作られた糸”です。

精紡で完成した糸は

基本的にはこれにあたります。

この図からも分かるように、単糸は「1本のまとまり」にひねりが入った

最もシンプルな構造です。

【特徴】

・柔らかい

・軽い

・風合いが出やすい

・毛羽が出やすい

【本質】

シンプルだが不安定

双糸とは│安定させるための構造

双糸とは”単糸を2本合わせて撚った糸”です。

双糸の構造を図解にしてみました。

この図から分かるように、2本の糸を逆方向に撚ることで、

安定した構造になります。

通常、1本の単糸は右肩上がりの「Z撚り」で作られます。

それを2本合わせて双糸にする時は、逆方向の左肩上がり「S撚り」で撚り合わせます。

これによって、糸の回転が打ち消し合い、

バランスの取れた真っ直ぐな糸になります。

【特徴】

・強度が高い

・均一性が良い

・毛羽が少ない

・見た目がきれい

双糸=高級というイメージがありますが、必ずしもそうとは限りません。

なぜ強いのか

→ 力が分散されるため

さらに

→ 撚り戻り(ねじれ)を打ち消せる

※この辺りは、本記事内の「撚り方向(S撚り・Z撚り)」でより詳しく解説します。

【本質】

単糸の弱点を補う構造

撚糸とは│構造の”考え方”そのもの

撚糸とは、

”複数の糸を撚り合わせたものの総称”です。

つまり

双糸も撚糸の一種になります。

※厳密には「三子糸(みこいと)」や「多子糸(たっこいと)」や「諸撚り(もろより)」など

細かな分類がありますが、

本記事では理解しやすさを優先し、「撚糸」という呼び方でまとめて解説しています。

これらの違いは、断面で見ると一目で理解できます。

次の図で整理していきます。

図解:断面で見る違い

この図から分かるように、糸の違いは見た目ではなく内部構造にあります。

【種類(代表例)】

・双糸(2本)

・三子糸(3本)

・多子糸(4本〜)

※本数や撚り方によってさらに細かく分類されます。

【役割】

・強度調整

・太さ調整

・風合い設計

【本質】

糸は”組み合わせて設計できる素材”になる

引き揃えとは│撚らないという選択

ここでひとつ、「撚らない」という選択も存在します。

それは

”引き揃え(ひきそろえ)”です。

引き揃えとは、

”複数の糸を撚らずに、そのまま揃えて使う構造”です。

図解:引き揃えの構造

イメージしやすいように、かなり大まかな表現で資料を作りましたが、

引き揃えの糸は、

【特徴】

・柔らかい

・ふくらみが出る

・糸同士が独立している

・一体化していないため動きが出る

このような糸をなぜ使うかというと、

端的に言えば、”空気感を出すため”です。

撚らないことで

ボリューム感やナチュラルな風合いが生まれます。

【使用例】

・ニット糸

・意匠糸(デザイン糸)

・ファンシーヤーン

【本質】

撚らないことで”別の性能”を作る構造

撚り方向(S撚り・Z撚り)

撚り方向も、この手の話題では大体セットで語られることの多い知識です。

この図から分かるように、糸には撚る方向があり、

これが風合いやねじれに影響します。

なぜ、撚り方向が重要かというと

・織物・編物との相性

・ねじれ防止

・風合い制御

主な理由はこのあたりです。

もう少しイメージしやすい身近な例を挙げると、

お気に入りのTシャツが洗濯するたびに「ねじれていく」あの現象です。

糸が元の姿に戻ろうと、回転するエネルギーが、

生地全体を歪ませてしまう。

これが「斜行(しゃこう)」の正体です。

撚りの力が強い単糸の服ほど、

この「回転しようとする力」に負けてしまい

サイドの縫い目が斜めにズレていってしまうのです。

逆に双糸の服が型崩れしにくいのは、糸の中で力が打ち消し合い

生地が安定しているからなんですね。

【本質】

方向まで含めて”設計”されている

単糸・双糸・撚糸の違いまとめ

まとめると、

・単糸 → 軽い・柔らかい

・双糸 → 強い・安定

・撚糸 → 設計自由

となります。

これらのことから分かるように、

単糸・双糸・撚糸の違いは

「本数」と「撚り」に集約されるのです。

なぜこの違いが重要なのか

ここが最重要です。

糸は、この後「布」になります。

つまり

糸の構造 → 布の構造 → 製品の品質

すべてが繋がっているのです。

例えば、

・単糸 → 柔らかいTシャツ

・双糸 → しっかりしたシャツ

・撚糸 → 機能素材

・引き揃え → ふくらみのあるニットなど

用途が変わるのは”構造が違うから”です。

まとめ│糸は「構造で性能が決まる」

糸の違いは、

番手(太さ)だけではありません。

本質は「どう組み合わされているか」で

糸とは”構造を持った素材”なのです。

単糸最小単位
双糸安定構造
撚糸設計構造

つまり糸は、

「太さ」ではなく、「構造」によって性能が決まるのです。

次の記事│織物とは何か

ここまでの全4回の記事で

糸の太さ(番手)

糸とはなにか(3つの意味)

糸の作り方(紡績)

・糸の構造(単糸・双糸・撚糸)

が理解できました。

次に考えるべきは

”この糸をどう使うか”です。

糸は単体ではなく

組み合わされて「布」になります。

次の記事では、

「織物とは何か」をテーマに

・糸がどう交差するのか

・なぜ布になるのか

・構造がどう影響するのか

を解説します。

▶︎次の記事

織物とは何か│糸が布になる仕組み

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