綿はどうやって糸になるのか─ 紡績工程(開繊・カード・コーマ・粗紡・精紡)を図解で完全解説

繊維知識

糸はどうやって作られるのか?綿から糸になるまでの全体像

前回の記事では、

糸とは繊維を布に変えるための存在である

と説明しました。

では、その糸は

どのようにして作られるのでしょうか?

綿の繊維は

1本あたり20〜40mm程度しかありません。

しかし実際の布は

何百m、何kmにもなります。

この

短い繊維を長い糸に変える工程が

紡績(ぼうせき)です。

図解:綿が糸になるまでの流れ

まずは全体像を見てみます。

図解の通り、

原料(綿花)

開繊(かいせん)

カード

コーマ(※必要に応じて)

粗紡(そぼう)

精紡(せいぼう)

撚糸(※必要に応じて)

といった流れになります。

この一連の工程によって

バラバラの繊維 → 一本の糸

へと変換されます。

原料(綿花)│すべての出発点

紡績はまず

綿花(コットン)

から始まります。

綿花は

・ 種子の周りに生えた繊維

・ 長さがバラバラ

・ ゴミや短繊維が混ざっている

という状態です。

ここから

整える・揃える・細くする

工程が始まります。

開繊(かいせん)│固まりをほぐす

綿花は収穫・圧縮されているため「固まり」の状態になっています。

開繊とは、それを機械で解きほぐし、

繊維をバラバラにして膨らませる工程です。

つまり

・ 綿をほぐす

・ 空気を含ませる

・ 異物をある程度除去する

ことによって

繊維をバラバラに近づけます。

この開繊工程は

後の品質に大きく影響します。

カード│繊維を平行に揃える

次に行うのが

カード工程(カーディング)です。

ここでは

・ 繊維をほぐしながら

・ 一方向に揃え

・ スライバー(帯状の繊維束)にする

という作業を行います。

この工程によって

バラバラだった繊維が”方向を持つ”ようになります。

この、一定の方向に揃えて、帯状の繊維束にしたものを

”スライバー”と呼びます。

紡績の中でも

最も重要な工程の一つです。

(関連用語) カード糸

コーマ│短繊維を取り除く(高品質糸)

すべての糸で行われるわけではありませんが、

高品質な糸では”コーマ工程”を通します。

ここでは

・ 短い繊維を除去

・ 繊維の長さを揃える

・ 不純物をさらに除去

します。

結果として、コーマ工程を通った糸が完成すると

・ 強度が高い

・ 毛羽が少ない

・ 均一な糸

になります。

コーマ工程が終わると、

短繊維が除去され、長い繊維のみが平行に揃った

”スライバー”の状態になります。

重要なのは、

まだ”束”であって”糸”ではないという事です。

多くの人が

「細くなっている=糸」と考えてしまいがちですが、

実は違います。

正しくは撚りが入って初めて”糸”になるのです。

ですので、

この時点ではまだ糸ではないのです。

この後、粗紡や精紡の工程を経て

糸が完成していきます。

コーマ糸(コーマード糸)は

このコーマ工程を通り、その後の工程が進み

完成した糸のことなのです。

”まだ束であって、糸ではない”

これは、ネットや書物で文字だけ読んでいた頃の私も

全くイメージが湧かなかったところです。

ざっくりにはなりますが、そんな経験をもとに、見学などの際に実務的に使えそうな見分け方を一覧でまとめておきます。

状態見た目正体
ふわふわバラバラ開繊
帯状まとまっているスライバー
少しねじれ弱い粗糸(そし) → 後述
しっかりねじれ強い

前項と繋げて、カード工程とコーマ工程を一言でまとめるとすれば、

カードで”ほぐし”、コーマで”選別”する

そんなところでしょうか。

(関連用語) コーマ糸

粗紡(そぼう)│少しだけ撚りをかける

前述の通り、カードやコーマで作られたスライバーは

まだ、太くて弱い状態です。

そこで粗紡では

・ 少し細くする

・ 軽く撚りをかける

ことで

扱える状態(ローピング)

にします。

この工程で軽め(=甘め)に撚りをかけたものを

粗糸(そし)と呼びます。

太さは、だいたい毛糸くらいをイメージするとわかりやすいと思います。

実際には、糸の形になる前段階なので

先ほどと同じくまだ、繊維束の状態なのですが

ここで初めてみなさんのイメージする

「糸」に近い形になります

(関連用語) 粗紡機

精紡(せいぼう)│糸として完成させる

いよいよ最終工程です。

精紡では、先ほど出てきた”粗糸”を

リング精紡機などで

・ さらに細く引き伸ばし(ドラフト)

・ 適切な撚りをかけ

一本の糸として完成させます。

ここで決まる要素は

・ 太さ(番手)

・ 強度

・ 均一性

などです。

つまり精紡は

糸の性能を決定する工程

となります。

(関連用語) リング紡績機

撚糸│糸をさらに強く・安定させる

精紡でできた糸は

単糸(1本の糸)です。

ここからさらに、

・ 複数本を合わせる

・ 追加で撚りをかける

ことで

双糸・撚糸になります。

この工程によって

・ 強度アップ

・ 風合いの変化

・ 用途の拡張

が可能となります。

まとめ│紡績とは何をしているのか

綿から糸になる工程を一言で言うと

”繊維を整えて、揃えて、細くして、撚る”

となります。

つまり紡績とは

1. バラバラの繊維を

2. 同じ方向に揃え

3. 細く引き伸ばし

4. 撚って固定する

ことによって

”長くて使える状態の糸の形にする技術”

なのです。

次の記事│単糸・双糸・撚糸とは何か

ここまでで

糸がどのように作られるかは理解できました。

しかし糸には

・ 単糸

・ 双糸

・ 撚糸

といった

構造の違いがあります。

これらは、

・ 強度

・ 風合い

・ 用途

に大きく影響します。

次の記事では

糸の構造そのものに

焦点を当てて解説します。

▶︎ 次の記事

単糸・双糸・撚糸とは何か

次回も楽しみにお待ちください。

【出典】

・ 日本紡績協会「紡績工程に関する基礎資料」

・ 繊維学会 編 「繊維便覧(第3版)

・ 日本規格協会(JIS)L0204 用語(繊維関連)

・ Textile Institute(英国)”Textiles Terms and Definitions”

・ Cotton Incorporated(米国)技術資料

・ 各紡績メーカー技術資料(リング精紡機・カード機仕様書等)

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