染色・整理加工とは何か│最初に結論
染色・整理加工とは、糸や生地に色を付けるだけでなく、素材・用途・色・風合い・寸法・堅牢度を調整し、製品として使える状態に仕上げる工程です。
染色は、単に「布を染める作業」ではありません。
織機や編機から出てきたばかりの生地は、まだそのままでは製品になりません。
色が付いていなかったり、汚れや糊が残っていたり、風合いや寸法も安定していなかったりします。
そんな生地を、私たちが普段使うシャツやタオル、カーテンなどの生地へ仕上げるために行われるのが、
染色・整理加工(せんしょく・せいりかこう)です。
実際の現場では、
・どの素材を染めるのか
・どの染料を使うのか
・どのくらい色落ちしにくくするのか
・洗濯するものなのか
・日光に当たるものなのか
・染めた後にどう乾かすのか
・シワや汚れが出ないか
・最終的にどのような風合い・寸法に仕上げるのか
まで考えます。
つまり染色・整理加工とは、
「色を付ける工程」ではなく、
「生地の見た目・性能・扱いやすさを、用途に合わせて整える工程」です。
ITomap的には、染色を「色を入れる作業」とだけ見るのではなく、
色・素材・用途・仕上げまでをつなげて考えると、現場の実態に近づきます。
実際の流れに沿って解説していきます。
はじめに
「染色」と聞くと、多くの人は白い布を染料の中に入れて、赤や青に染める場面を想像するかもしれません。
もちろん、それも染色の一部です。
しかし、工業的な染色では、色を付けるだけでは仕事は終わりません。
染めた後には、
・洗う
・絞る
・乾かす
・幅や寸法を整える
・薬剤を付ける
・風合いを調整する
・シワや汚れを防ぐ
・色落ちしにくさを確認する
といった工程が関わります。
そのため、染色工場の仕事は「色を付ける仕事」というより、
素材と用途に合わせて、
生地を製品として使える状態に仕上げる仕事
と考えた方が分かりやすいです。
たとえば、同じ綿の生地でも、使い道によって求められる染色は変わります。
洗濯する衣料なら、洗濯しても色落ちしにくいことが重要です。
カーテンなら、日光に当たり続けても色あせしにくいことが重要です。
緞帳(どんちょう)や国旗のように、大きな面積で人目に触れるものなら、色の見え方や耐久性も重要になります。
このように、染色は「何色にするか」だけではなく、
何の素材を、何に使うために、
どのような性能で仕上げるかを考える工程です。
同じ綿100%の生地でも、
・ふんわり柔らかいガーゼ
・パリッとしたワイシャツ
・ホテルのシーツ
・撥水加工されたアウトドア生地
では、触った時の印象や性能が大きく違います。
その違いを生み出している大きな要因の一つが整理加工なのです。
極端に言えば、同じ生機から作られた生地でも、整理加工の内容によってまったく違う製品になります。
染色整理加工は、単に仕上げを行う工程ではなく、
生地の最終的な性能や価値を決める重要な工程とも言えます。
図解:染色・整理加工の流れ
染色・整理加工は、上の図のように、大きく見ると次のような流れで理解できます。
【染色・整理加工の基本構造】
素材を確認する
↓
染料・薬剤・加工方法を選ぶ
↓
試験室で色や条件を確認する
↓
本番の染色を行う
↓
洗浄・絞り・乾燥を行う
↓
整理加工で風合い・寸法・機能を整える
↓
検査して製品として使える状態にする
もう少し噛み砕くと、次のようになります。
【素材を見る】
綿、ナイロン、ポリエステル、アクリルなど、繊維の種類によって使える染料や加工条件が変わります。
【用途を見る】
衣料、カーテン、国旗、緞帳、資材など、使われる場面によって必要な性能が変わります。
【染料を選ぶ】
素材や用途に合わせて、反応染料、酸性染料、分散染料、カチオン染料などを使い分けます。
【色を合わせる】
試験室で小さな生地を使い、狙った色に近づけるための条件を確認します。
【本番で染める】
ジッガーなどの染色機を使い、実際の反物や生地を染めます。
【染めた後を整える】
乾燥、幅出し、テンター加工、柔軟加工、防炎加工などを通して、最終的な生地の状態を整えます。
ここで大切なのは、染色は「染める瞬間」だけで成り立っているわけではないということです。
染める前の試験、染料の選定、染めた後の乾燥や整理加工まで含めて、最終的な生地の品質が決まります。
※「ジッガー」「ビーカー試験」「テンター」「反応染料」「分散染料」「カチオン染料」などの詳しい意味は、用語辞典カテゴリで個別に解説しています。
なぜ染色は色を付けるだけでは終わらないのか
染色が色を付けるだけで終わらない理由は、生地は「色が付いていれば完成」ではないからです。
製品として使われる生地には、色以外にも多くの条件が求められます。
たとえば、次のような条件です。
・生地の寸法が大きく狂わない
・シワやスジが目立たない
・風合いが硬すぎない、柔らかすぎない
・必要な機能加工がされている
・後工程で扱いやすい状態になっている
つまり、染色では「色の見た目」と「生地としての性能」を同時に考える必要があります。
たとえば、洗濯する衣料であれば、洗濯に対する色落ちのしにくさが重要になります。
カーテンや国旗のように光に当たりやすいものでは、日光による色あせにくさが重要になります。
作業服や資材用途であれば、摩擦や汗、薬品、屋外環境などに対する耐久性が求められる場合もあります。
このように、染色は「色を付ける作業」であると同時に、
用途に合わせて、どの程度その色を保てるかを設計する作業でもあります。
前回テーマ/関連テーマとの違い
織物や編物の記事では、糸がどのように組み合わさって布になるのかを見てきました。
織物は、経糸と緯糸を交差させて作る構造です。
編物は、糸でループを作り、そのループ同士をつなげて作る構造です。
それに対して染色・整理加工は、できあがった糸や生地に対して、
色を付ける
風合いを整える
寸法を整える
機能を付ける
製品として使える状態にする
という工程です。
つまり、織物や編物が「布の構造を作る工程」だとすれば、
染色・整理加工は「布の見た目と性能を仕上げる工程」です。
同じ生地でも、染色・整理加工の内容によって、印象や使い道は大きく変わります。
たとえば、同じ白い綿生地でも、
・生成りのまま使う
・反応染料で鮮やかに染める
・防炎加工をする
・柔軟加工をする
・幅や寸法を整える
といった違いによって、最終的な生地の性格は変わります。
生地は、織ったり編んだりした時点で完成するのではなく、
染色・整理加工によって、使える状態へ近づいていきます。
身近な染色と工業用の染色はどう繋がるのか
身近な染色としては、草木染め、藍染め、家庭での布染め、手芸用の染色などがあります。
これらは、染料や染液を使って布や糸に色を付けるという意味では、工業用の染色とつながっています。
ただし、工業用の染色では、さらに多くの条件を管理する必要があります。
工業用の染色では、
・同じ色を安定して再現する
・大量の生地をムラなく染める
・洗濯や摩擦に耐える色にする
・納期やコストに合わせる
・後工程で問題が出ないようにする
・品質基準を満たす
といったことが求められます。
身近な染色では、多少のムラや偶然の色の変化が味になることもあります。
しかし、工業用の染色では、ムラや色ブレは不良になる場合があります。
たとえば、同じ商品として並ぶ服の色が1枚ずつ大きく違っていたら、製品としては困ります。
また、洗濯したらすぐに色落ちしたり、汗や摩擦で他の服に色移りしたりしても問題になります。
そのため、工業用の染色では、
「染まったかどうか」ではなく、
「狙った色と性能で、安定して染められたか」が重要になります。
工業用の染色・整理加工とは何か
工業用の染色・整理加工とは、糸や生地を大量に、安定した品質で、用途に合わせて仕上げる工程です。
工業用の染色では、次のような対象があります。
・糸を染める
・生地を染める
・製品の形にしてから染める
・プリントで柄を付ける
・薬剤加工で機能を付ける
・乾燥や幅出しで寸法を整える
染色と一口に言っても、染める段階によって呼び方や方法が変わります。
たとえば、
【糸染め】 糸の状態で染めてから、織ったり編んだりする方法です。
【生地染め】 織物や編物など、生地になった状態で染める方法です。
【製品染め】 服や製品の形になってから染める方法です。
【プリント】 生地全体を染めるのではなく、柄や模様として色を付ける方法です。
整理加工では、乾燥、幅出し、柔軟加工、防炎加工などを通して、生地の寸法、風合い、機能を整えます。
たとえばテンターは、生地を一定の幅に広げながら乾燥や熱処理を行い、幅や寸法を整える整理加工設備のひとつです。
ただし、この記事ではテンターや整理加工の細かな仕組みには深く入りません。
この記事ではまず、
「染色は色を付けるだけではなく、整理加工まで含めて生地を仕上げる工程である」
という全体像を押さえることを目的にしています。
※「糸染め」「生地染め」「製品染め」「プリント」「テンター」の違いは、用語辞典カテゴリで今後個別に解説予定です。
染色・整理加工を見る時の基本│素材と用途
染色・整理加工を見るときに重要なのは、「素材」と「用途」です。
この2つを見ないと、なぜその染料を使うのか、なぜその加工が必要なのかが分かりにくくなります。
素材を見る
繊維は、種類によって染まり方が違います。
綿、麻、レーヨンなどのセルロース系繊維と、ナイロン、ポリエステル、アクリルでは、繊維の性質が違います。
そのため、同じ染料で同じように染めることはできません。
代表的には、次のような組み合わせがあります。
【綿などのセルロース系繊維】
反応染料、硫化染料、スレン染料、ナフトール染料などが使われることがあります。
【ナイロン】
酸性染料が使われることが多いです。
【ポリエステル】
分散染料が使われることが多いです。
【アクリル】
カチオン染料が使われることが多いです。
ただし、これは大まかな整理です。
実際には、素材の混率、染色方法、用途、求める堅牢度、工場の設備によって選択は変わります。
※「反応染料」「酸性染料」「分散染料」「カチオン染料」「硫化染料」「スレン染料」「ナフトール染料」は、用語辞典カテゴリで順次、個別に解説しています。
用途を見る
同じ素材でも、使われる用途によって必要な染色は変わります。
たとえば、同じ綿の生地でも、
・洗濯する衣料
・日光に当たるカーテン
・舞台で使う緞帳
・屋外で使う国旗
・摩擦を受けやすい作業用品
では、重視するポイントが変わります。
洗濯するものでは、洗濯による色落ちのしにくさが重要です。
カーテンや国旗では、日光による色あせのしにくさが重要です。
作業用品では、摩擦や汗に対する色移りのしにくさが重要になることがあります。
このように、染色では、何色にするかだけでなく、
その色を、どの環境で、どのくらい保てるようにするか
を考える必要があります。
よく使われる染色・整理加工の例
代表例1│ビーカー試験
ビーカー試験とは、本番の染色に入る前に、小さな生地片や糸を使って、色の出方や条件を確認する試験です。
いきなり大量の生地を染めるのではなく、試験室で小さく確認してから本番に進むことで、色のズレや加工条件の問題を減らします。
ビーカー試験では、
・染料の配合
・温度
・時間
・薬剤の量
・素材との相性
・狙った色に近いかどうか
などを確認します。
ただし、ビーカー試験でうまくいった色が、本番の機械でも完全に同じように出るとは限りません。
試験室と現場では、浴比、機械の動き、生地量、温度のかかり方などが違うためです。
そのため、試験室の仕事は「色を作る仕事」であると同時に、
本番で再現できる条件を探る仕事でもあります。
※ビーカー試験の詳しい流れや、本番染色との違いは、「ビーカー試験」で個別に解説しています。
代表例2│ジッガーによる生地染め
ジッガーとは、反物を巻き取りながら、染液の中を往復させて染める染色機の一種です。
主に生地染めで使われる機械のひとつで、生地を広げた状態に近い形で扱いながら染色します。
ジッガーでは、
・生地の張力
・染液の状態
・温度
・時間
・巻き取りの状態
・染めムラ
などに注意する必要があります。
生地を巻き取りながら染めるため、テンションのかかり方や生地の重なり方が、仕上がりに影響することがあります。
ジッガーは、初心者にとっては聞き慣れない言葉ですが、
「反物を染めるための代表的な染色機のひとつ」
と理解すると分かりやすいです。
※ジッガーの構造や、どのような生地に使われるのかは、「ジッガー」で詳しく解説しています。
代表例3│シリンダー乾燥機による乾燥
シリンダー乾燥機とは、加熱されたシリンダーに生地を接触させながら乾燥させる設備です。
一見すると、染めた生地を乾かしているだけに見えるかもしれません。
しかし、実際の現場では、乾燥機の作業にも多くの判断があります。
シリンダー乾燥機では、
・乾燥スピード
・生地のテンション
・シワやスジ
・マングルでの絞り具合
・前に流した生地からの汚れ
・次に流す生地の順番
などを見ながら作業します。
たとえば、濃色の生地を流した後に淡色や白っぽい生地を流す場合、マングルやシリンダーに残った染料が次の生地に移る可能性があります。
そのため、必要に応じて導布を通したり、機械を洗ったり、流す順番を考えたりします。
また、生地を止めずに流しながら、投入口と出口側の状態を見なければならない場合もあります。
つまり、シリンダー乾燥機は単なる乾燥設備ではなく、
乾燥・テンション・シワ・汚れ・生産効率を同時に管理する工程です。
※「シリンダー乾燥機」「マングル」「導布」「テンション」は、用語辞典カテゴリで個別に解説していきます。
代表例4│テンターによる幅出し・乾燥・仕上げ
テンターとは、生地の両端を保持しながら熱をかけ、幅や寸法を整える整理加工設備のひとつです。
染色後の生地は、水分を含んだり、張力を受けたりすることで、幅や長さ、風合いが変化している場合があります。
テンターでは、生地を一定の幅に広げながら乾燥や熱処理を行い、仕上がり幅や寸法を整えます。
また、柔軟加工、防炎加工、撥水加工など、薬剤加工と関わることもあります。
ただし、テンターは整理加工の中でも大きなテーマです。
そのため、この記事では、
「染色後の生地を、最終的な幅・寸法・風合いに近づける設備のひとつ」
として押さえておきます。
テンターの詳しい仕組みや、幅出し、オーバーフィード、熱セット、薬剤加工との関係は、別記事「整理加工とは何か」または用語辞典カテゴリ「テンター」で詳しく解説しています。
例外・誤解されやすいポイント│「染色なのに色を付けるだけではない」の特殊性
染色で誤解されやすいのは、「染色=色を付ける工程」と考えすぎてしまうことです。
もちろん、色を付けることは染色の中心です。
しかし、工業的な染色では、色が付いた後の状態まで含めて考える必要があります。
誤解されやすいポイントは、次の通りです。
誤解1│染色は色をつければ終わり
染色は、色を付ければ終わりではありません。
色が付いていても、
・洗濯で色落ちする
・摩擦で他の生地に色移りする
・日光で急に色あせる
・乾燥後に皺が残る
・寸法が大きく変わる
・風合いが狙いと違う
といった問題があれば、製品として使いにくくなります。
染色では、色だけでなく、使える状態になっているかが重要です。
誤解2│同じ色なら同じ染め方で良い
同じ色に見えても、素材が違えば染め方は変わります。
綿、ナイロン、ポリエステル、アクリルでは、使う染料や条件が違います。
たとえば、綿に向く染料を、そのままポリエステルに使っても、同じようには染まりません。
染色では、見た目の色だけでなく、素材との相性を見る必要があります。
誤解3│試験室で色が出れば本番も同じになる
試験室で狙いの色が出ても、本番で完全に同じように出るとは限りません。
小さなビーカー試験と、大きな染色機では条件が違います。
そのため、試験室の結果をそのまま信じるだけではなく、
本番でどのように再現するかを考える必要があります。
誤解4│乾燥はただ乾かすだけ
乾燥は、単に水分を飛ばすだけではありません。
乾燥スピード、テンション、シワ、汚れ、前後に流す生地の順番などが仕上がりに影響します。
特に連続して生地を流す現場では、前に流した濃色の影響が次の生地に出ることもあります。
そのため、乾燥工程も染色・整理加工の品質を左右する重要な工程です。
誤解5│整理加工は最後の軽い仕上げにすぎない
整理加工は、単なる最後の微調整ではありません。
乾燥、幅出し、テンター加工、柔軟加工、防炎加工などによって、生地の寸法、風合い、機能、扱いやすさが変わります。
同じ生地でも、整理加工の内容によって、硬さ、柔らかさ、幅、縮みやすさ、光沢、機能性が変わることがあります。
そのため整理加工は、生地の最終的な印象と使い道を左右する重要な工程です。
ただし、整理加工の詳しい内容はこの後の別記事で扱います。
染色・整理加工を見る視点は「見た目」ではなく「設計」
染色・整理加工を見るときは、表面の色だけを見るのではなく、
その色と仕上がりがどのように設計されているかを見ることが重要です。
染色・整理加工では、次のような視点が必要です。
・素材に合った染料か
・用途に合った堅牢度か
・狙った色に近いか
・量産で再現できるか
・乾燥や整理加工で問題が出ないか
・風合いや寸法が用途に合っているか
・次工程や最終製品で扱いやすいか
たとえば、見た目には同じ黒い生地でも、
・綿の黒
・ポリエステルの黒
・ナイロンの黒
・洗濯する衣料用の黒
・舞台幕用の黒
・屋外用途の黒
では、求められる条件が違います。
染色は、色を付ける技術であると同時に、
素材と用途に合わせて、色の持ち方や仕上がりを設計する技術です。
ITomap的には、染色・整理加工は「見た目を変える工程」ではなく、
生地の使われ方に合わせて、色と性能を整える工程として理解すると分かりやすくなります。
まとめ│染色・整理加工とは「素材と用途で仕上がりが決まる工程」
染色・整理加工とは、糸や生地に色を付け、風合い・寸法・機能・堅牢度を整え、製品として使える状態に仕上げる工程です。
染色では、単に色を付けるだけでなく、
・素材
・染料
・用途
・色の再現性
・洗濯や摩擦への強さ
・日光による色あせにくさ
・乾燥や整理加工での仕上がり
・後工程での扱いやすさ
まで考える必要があります。
綿、ナイロン、ポリエステル、アクリルでは、使われる染料が変わります。
洗濯するもの、日光に当たるもの、舞台で使うもの、屋外で使うものでも、求められる性能が変わります。
染色後には、乾燥、幅出し、テンター加工、柔軟加工、防炎加工などの整理加工を通して、生地の状態を整えることもあります。
そのため、染色・整理加工は「色を付ける作業」ではなく、
素材と用途に合わせて、色と生地の性能を仕上げる工程です。
ITomap的には、染色・整理加工を理解する入口は、
「何色に染めるか」ではなく、
「何の素材を、何に使うために、どのような状態に仕上げるか」を見ることです。
次の記事│整理加工とは何をしているのか
次の記事では、染色後の生地を仕上げる「整理加工」について、さらに詳しく見ていきます。
染色で色を付けた生地は、そのまま製品になるわけではありません。
乾燥、幅出し、テンター加工、柔軟加工、防炎加工、寸法調整などを通して、最終的に使いやすい状態へ整えられます。
次の記事では、
・整理加工とは何か
・乾燥とは何をしているのか
・幅出しとは何か
・テンターとは何か
・風合いはどう整えられるのか
・機能加工とは何か
・なぜ整理加工で生地の印象が変わるのか
を整理していきます。
よくある質問(FAQ)
- Q染色と整理加工の違いは何ですか?
- A
染色は、糸や生地に色を付ける工程です。
整理加工は、染色後または生機の状態の生地に対して、風合い、寸法、機能、表面状態などを整える工程です。
ただし、実際の工場では、染色と整理加工は連続して関わることが多く、完全に切り離して考えにくい場合があります。
たとえば、生地を染めた後には、洗い、絞り、乾燥、幅出し、テンター加工、柔軟加工、防炎加工などが必要になることがあります。
そのため、初心者はまず、
染色=色を付ける工程
整理加工=生地を使える状態に整える工程
と理解すると分かりやすいです。
- Qなぜ染色は色を付けるだけではないのですか?
- A
生地は、色が付いていれば完成というわけではありません。
洗濯で色落ちしないか、摩擦で色移りしないか、日光で色あせしにくいか、乾燥後にシワが出ないか、寸法が安定しているかなども重要です。
そのため、染色では「何色にするか」だけでなく、
「その色をどの用途で、どのくらい保てるようにするか」まで考えます。
- Q身近な草木染めは工業染色ですか?手染めですか?
- A
草木染めは、一般的には手作業や小規模な染色として行われることが多く、工業染色とは目的や管理方法が異なります。
ただし、染料や染液を使って繊維に色を付けるという意味では、染色の一種です。
工業染色では、大量の生地を安定して同じ色に染めることや、洗濯・摩擦・日光などに対する堅牢度が重視されます。
一方、草木染めでは、自然な色合いや偶然の変化、手作業ならではの風合いが価値になることもあります。
- Q染色にはどんな種類がありますか?
- A
染色には、染める段階や方法によっていくつかの種類があります。
代表的には、次のようなものがあります。
【糸染め】
糸の状態で染めてから、織ったり編んだりする方法です。
【生地染め】
織物や編物など、生地になった状態で染める方法です。
【製品染め】
服や製品の形になってから染める方法です。
【プリント】
生地全体を染めるのではなく、柄や模様として色を付ける方法です。
また、素材によって使う染料も変わります。
綿には反応染料など、ナイロンには酸性染料、ポリエステルには分散染料、アクリルにはカチオン染料が使われることが多いです。
- Q工業用の染色と手作業の染色は同じものですか?
- A
どちらも繊維に色を付けるという意味では染色です。
しかし、目的や管理する内容が違います。
手作業の染色では、個体差や偶然のムラが味になることがあります。
一方、工業用の染色では、同じ色を安定して再現すること、品質基準を満たすこと、大量生産に対応することが重要です。
そのため、工業用の染色では、染料の配合、温度、時間、薬剤、機械条件、堅牢度などを細かく管理します。
- Q例外的に同じ素材でも違う染料を使うことはありますか?
- A
あります。
同じ素材でも、用途、色、求める堅牢度、コスト、加工条件、工場設備によって、使う染料が変わることがあります。
たとえば、綿には反応染料が使われることが多いですが、用途によっては硫化染料、スレン染料、ナフトール染料などが選ばれることもあります。
また、ポリエステルでも、通常の分散染料だけでなく、カチオン可染ポリエステルのように別の染色設計がされる素材もあります。
そのため、「この素材には必ずこの染料」と固定して覚えるのではなく、
「この素材にはこの染料が使われることが多い」と理解するのが安全です。
- Qビーカー試験と本番染色の違いは何ですか?
- A
ビーカー試験は、小さな生地片や糸を使って、色や条件を確認する試験です。
本番染色は、実際の機械で反物や大量の生地を染める工程です。
ビーカー試験では狙いの色が出ても、本番では生地量、機械の動き、温度のかかり方、浴比などが異なるため、完全に同じ結果になるとは限りません。
そのため、試験室では色を作るだけでなく、本番で再現しやすい条件を考える必要があります。
- Qなぜ素材によって使う染料が違うのですか?
- A
繊維の種類によって、染料との相性が違うからです。
綿、ナイロン、ポリエステル、アクリルでは、繊維の化学的な性質や水とのなじみ方が異なります。
そのため、同じ染料を使っても、すべての素材が同じように染まるわけではありません。
代表的には、
・綿などのセルロース系繊維には反応染料など
・ナイロンには酸性染料
・ポリエステルには分散染料
・アクリルにはカチオン染料
が使われることが多いです。
- Q整理加工にはどんな目的がありますか?
- A
整理加工の目的は、生地を製品として使いやすい状態に整えることです。
具体的には、
・寸法を整える
・幅を整える
・風合いを調整する
・シワを減らす
・柔らかさを付ける
・防炎性などの機能を付ける
・乾燥させる
・表面の状態を整える
などがあります。
整理加工は、染色後の生地を最終的な用途に近づけるための重要な工程です。
- Qテンターとは何ですか?
- A
テンターとは、生地の両端を保持しながら熱をかけ、幅や寸法を整える整理加工設備のひとつです。
染色後の生地は、水分や張力の影響で幅や風合いが変化している場合があります。
テンターでは、生地を一定の幅に広げながら乾燥や熱処理を行い、仕上がりの幅や寸法を整えます。
また、柔軟加工、防炎加工、撥水加工などの薬剤加工と関わることもあります。
詳しい仕組みは、別記事「整理加工とは何か」や用語辞典「テンター」で解説します。
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この記事の前提になる基礎知識を整理した記事です。
染色・整理加工は、糸や生地ができた後に関わる工程です。
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[整理加工とは何か|なぜ生地は染めたあとに仕上げが必要なのか]
本記事の次に理解しておきたい内容です。
染色が色を付ける工程だとすれば、整理加工はその生地を最終用途に合わせて整える工程です。
乾燥、幅出し、テンター加工、柔軟加工、防炎加工など、染色後の生地がどのように仕上がっていくのかを詳しく知りたい方は、あわせてご覧ください。
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関連用語
この記事に出てきた専門用語は順次、用語辞典カテゴリで個別に整理し公開予定です。
是非こちらもご活用ください。
・生成り
・生機
・晒し
・縮率
・染色
・整理加工
・試験室
・ジッガー
・テンター
・マングル
・導布
・堅牢度
・反応染料
・糊付け
・糊抜き
・酸性染料
・分散染料
・硫化染料
・スレン染料
・ナフトール染料
・糸染め
・生地染め
・製品染め
・プリント
・防炎加工
・柔軟加工
・幅出し


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