剪毛(せんもう)

用語辞典

剪毛(せんもう)とは、生地表面にある毛羽やパイルを、一定の高さに刈りそろえる加工です。

言葉だけ見ると難しく感じますが、考え方はかなりシンプルです。

髪の毛をバリカンやハサミで長さをそろえるように、生地表面の毛を刈りそろえる加工と考えるとイメージしやすくなります。

剪毛は、生地そのものを切る加工ではありません。

切っているのは、生地表面に出ている毛羽やパイルです。

たとえば、起毛した生地、別珍、ベルベット、パイル生地、コール天・コーデュロイなど、表面の毛羽やパイルの見え方が大切な生地で関係することがあります。

剪毛を行うことで、

・毛の高さをそろえる

・表面をなめらかに見せる

・毛羽の乱れを整える

・光沢や手触りを整える

・生地表面を均一に見せる

といった効果が出る場合があります。

ITomapでは、剪毛を「生地表面の毛羽やパイルを刈りそろえ、表面感を整える加工」として整理します。

(一言解説)剪毛とは、生地表面に出ている毛羽やパイルを刈りそろえ、表面の高さや見え方を整える加工です。簡単に言えば、生地の表面の毛を“散髪”して、長さをそろえる加工です。

【混乱を避けるために/カッチングとの違い】

剪毛(せんもう)とカッチングは、どちらも毛やパイルを切る加工に関係しますが、同じ工程ではありません。

カッチングは、コール天・コーデュロイの畝を作るために、表面側に浮かせて織り込んだよこパイル糸をカットする工程です。

一方、剪毛は、すでに生地表面に出ている毛羽やパイルの高さを刈りそろえ、表面感を整える加工です。シェーリングと呼ばれることもあります。

そのため、コーデュロイの畝を作る工程は「カッチング」、毛足を均一に整える仕上げ寄りの加工は「剪毛」または「シェーリング」と分けて考えると、混乱しにくくなります。

なお、産地や会社によっては、コーデュロイのカッチング工程を「剪毛」と表現する場合もあります。この記事では、混乱を避けるため、コーデュロイの畝を作るためにパイルを切る工程を「カッチング」、表面に出ている毛羽やパイルの高さを刈りそろえる仕上げ寄りの加工を「剪毛」として整理します。

特徴

剪毛の特徴は、表面の毛羽やパイルを一定の高さにそろえることです。

主な特徴は以下の通りです。

・生地表面の毛羽を刈りそろえる

・パイルの高さを整える

・表面をなめらかに見せる

・毛羽の乱れを減らす

・光沢感に影響する場合がある

・手触りに影響する場合がある

・起毛品やパイル生地と関係する

・別珍やベルベットなどの表面感にも関係する

・コール天・コーデュロイの表面調整に関係する場合がある

・強く刈りすぎると風合いや表情に影響する

剪毛は、毛を増やす加工ではありません。

また、毛を焼いて処理する加工でもありません。

表面にある毛を刃物で刈りそろえる加工です。

なぜ剪毛が必要なのか

剪毛が必要なのは、生地表面の毛羽やパイルの高さが不ぞろいだと、見た目や手触りが安定しにくいからです。

起毛やパイル加工をした生地では、表面に毛羽があります。

しかし、その毛羽の長さや向きが不ぞろいだと、

・表面が荒れて見える

・毛羽の長さがバラつく

・光沢がそろわない

・手触りにムラが出る

・高級感が出にくい

・柄や表情がぼやける

といったことがあります。

そこで剪毛によって、余分に長い毛や乱れた毛を刈りそろえます。

イメージとしては、芝生を刈って高さをそろえる感覚にも近いです。

芝生の長さがバラバラだと、全体が荒れて見えます。

同じように、生地表面の毛羽も長さがそろうことで、見た目や触り心地が整いやすくなります。

ITomap的には、剪毛は「毛をなくす加工」ではなく、「必要な毛羽を残しながら、表面の高さをそろえる加工」と考えるとわかりやすいです。

毛焼き・起毛・解毛との違い

剪毛は、毛焼き、起毛、解毛と混同されやすい言葉です。

どれも毛羽や表面感に関係しますが、やっていることが違います。

整理すると、次のようになります。

・剪毛:毛羽やパイルを刃物で刈りそろえる

・毛焼き:余分な毛羽を炎や熱で焼いて処理する

・起毛:生地表面の繊維をかき出して毛羽を立てる

・解毛:カッチングで切ったパイルの毛をほぐして立たせやすくする

剪毛は、毛を刈る加工です。

毛焼きは、毛を焼く加工です。

起毛は、毛を立てる加工です。

解毛は、切った毛をほぐす工程です。

かなり単純化すると、

・起毛=毛を出す

・解毛=毛をほぐす

・剪毛=毛の高さをそろえる

・毛焼き=余分な毛を焼いて整える

という違いです。

この整理をしておくと、表面加工の流れがかなり見えやすくなります。

コール天・コーデュロイとの関係

コール天・コーデュロイは、よこパイル糸を表面側に浮かせて織り込み、その浮いた部分をカッチングで切って畝を作る織物です。

その後、解毛で切ったパイルの毛をほぐし、必要に応じて毛焼きなどで余分な毛羽を整えます。

剪毛は、コール天・コーデュロイの表面調整に関係する場合があります。

たとえば、畝の毛羽の高さや表面感を整えたい場合、剪毛の考え方が関係します。

ただし、コール天・コーデュロイでは、畝のふくらみや毛羽感そのものが大切です。

そのため、必要な毛羽まで刈りすぎると、コール天らしい表情が弱くなる場合があります。

流れとしては、次のように整理できます。

・カッチング:パイルを切って毛羽を作る

・解毛:切った毛をほぐして立たせる

・剪毛:必要に応じて毛の高さをそろえる

・毛焼き:余分な毛羽を焼いて整える

・整理加工:風合い、幅、表面感を仕上げる

コール天・コーデュロイでは、「毛をどれだけ残すか」「どれだけ整えるか」が重要です。

剪毛は、その表面感を調整する考え方のひとつとして理解するとよいです。

別珍・ベルベット・起毛品との関係

剪毛は、別珍、ベルベット、起毛品などの表面感にも関係します。

別珍やベルベットのような生地では、表面の毛羽やパイルがそろっていることで、なめらかさや光沢感が出やすくなります。

起毛品でも、表面の毛羽が長すぎたり不ぞろいだったりすると、荒く見える場合があります。

剪毛によって毛の高さを整えることで、

・表面がなめらかに見える

・光沢がそろいやすくなる

・毛羽の乱れが減る

・手触りが整いやすくなる

・製品として見たときの表情が安定しやすくなる

といった効果が出る場合があります。

ただし、すべての起毛品やパイル品に剪毛が必要というわけではありません。

ふくらみや毛羽感を強く残したい生地では、あえて刈りそろえすぎないこともあります。

つまり剪毛は、「きれいにするために必ず行う加工」ではなく、最終的にどんな表面にしたいかによって使う加工です。

ITomap的理解│初心者が誤解しやすいポイント

初心者が誤解しやすいのは、剪毛という漢字を見て「難しい特殊加工」だと思ってしまうことです。

たしかに、文字面はかなり硬いです。

でも、入口のイメージはとてもシンプルです。

剪毛は、生地表面の毛を刈りそろえる加工です。

髪を切る、芝生を刈る、毛足をそろえる。

この感覚に近いです。

もうひとつ誤解しやすいのは、剪毛を「毛羽を全部なくす加工」と考えてしまうことです。

剪毛は、毛をゼロにする加工ではありません。

必要な毛羽やパイルを残しながら、余分に長い部分や不ぞろいな部分を整える加工です。

また、毛焼きとも違います。

毛焼きは炎や熱で余分な毛羽を焼く加工です。

剪毛は刃物で毛の高さをそろえる加工です。

ITomap的には、剪毛は「難しい漢字の加工名」ではなく、「生地表面の毛を散髪して、見た目や手触りを整える加工」と理解すると、かなり入りやすくなります。

現場での使われ方

現場では、剪毛は生地表面の毛羽やパイルの高さを整える加工として使われます。

たとえば、

・剪毛します

・剪毛をかけます

・剪毛工程です

・毛を刈ります

・毛足をそろえます

・表面をそろえます

・剪毛が強いです

・剪毛が甘いです

・毛足が残っています

・刈りすぎています

・表面が荒れています

・光沢がそろっていません

・起毛後に剪毛します

・パイルを剪毛します

といった形で使われることがあります。

現場で「剪毛が甘い」と言われる場合は、毛足がそろっていなかったり、余分に長い毛が残っていたりする状態を指すことがあります。

逆に「剪毛が強い」と言われる場合は、毛を刈りすぎて、ふくらみや表面感が失われている状態を指すことがあります。

剪毛の話が出たときは、

・どの毛をそろえたいのか

・毛を残したい生地なのか

・すっきりさせたい生地なのか

・毛足の高さはどれくらい必要か

・次工程は毛焼きなのか整理加工なのか

を見ると理解しやすくなります。

補足

剪毛は、刃物で毛を刈る加工です。

そのため、加工条件や刃物の状態が仕上がりに影響します。

毛を刈る高さ、加工速度、生地の張り、毛羽の状態、素材、表面のふくらみなどによって、仕上がりは変わります。

剪毛で見るべきポイントは、次のようなものです。

・毛の高さがそろっているか

・刈りすぎていないか

・毛羽が残りすぎていないか

・表面が荒れていないか

・光沢がそろっているか

・手触りが目的に合っているか

・生地のふくらみが残っているか

・次工程に影響しないか

剪毛は、強くかければきれいになるというものではありません。

毛を残したい生地では、刈りすぎると表情が弱くなります。

一方、なめらかに見せたい生地では、毛の高さをそろえることで表面感が整います。

つまり剪毛は、「刈る加工」ではありますが、実際にはどの毛を残し、どの毛をそろえるかを見る加工です。

関連用語・記事

記事

・コール天/コーデュロイとは何か|畝ができるまでを構造から理解する

整理加工とは何か|なぜ生地は染めたあとに仕上げが必要なのかを構造から理解する

用語

整理加工

コール天/コーデュロイ

解毛

毛焼き

カッチング

・シャーリング

・シャーリングタオル

・ガス焼き

風合い

光沢

生機

染色

乾燥

テンター

まとめ

剪毛(せんもう)とは、生地表面にある毛羽やパイルを、一定の高さに刈りそろえる加工です。

言葉だけ見ると難しく感じますが、考え方はとてもシンプルです。

髪を切る、芝生を刈る、毛足をそろえる。

そのように、生地表面の毛を整える加工です。

剪毛は、生地そのものを切る加工ではありません。

切っているのは、生地表面に出ている毛羽やパイルです。

毛焼きは炎や熱で余分な毛羽を焼く加工ですが、剪毛は刃物で毛の高さをそろえる加工です。

起毛は毛を立てる加工、解毛は切った毛をほぐす工程です。

剪毛は、必要な毛羽を残しながら、余分に長い毛や不ぞろいな毛を整えることで、表面のなめらかさ、光沢、手触り、見た目を整える加工です。

ITomap的には、剪毛は「難しい漢字の加工名」ではなく、「生地表面の毛を散髪して、見た目や手触りを整える加工」と理解すると、表面加工の中での役割が見えやすくなります。

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