サイジングとは、織物を織る前に、経糸へ糊剤を付けて、糸の毛羽を抑えたり、強度や耐摩耗性を高めたりする準備工程です。
ここで大切なのは、サイジングは「糸に糊を付ける」という意味では糊付けの一種ですが、一般的な糸の糊付けとは見える景色が少し違うことです。
藍染めや噴射式の機械による綛染め(かせぞめ)などの糸染めでは、糸の束や綛の状態で糊付けする場面を思い浮かべると思います。
一方、織物のサイジングでは、織物に使う経糸を、幅方向に何百本、何千本と並べた状態で、糊液を通し、ローラーで絞り、乾燥させ、織機にかけるためのビームに巻き取る流れをイメージするとわかりやすいです。
綛染めのように、糸が輪になり、束になり、ねじられた状態ではなく、まるで薄い糸のカーテンのような状態で、糊液、マングル、乾燥を通っていきます。
ITomapでは、サイジングを「織る前の経糸に糊を付け、織機上の摩擦や張力に耐えやすくする工程」として整理します。
(一言解説)サイジングとは、織物を織る前に、経糸へ糊剤を付けて補強し、毛羽を抑えて織りやすくする工程です。簡単に言えば、経糸が織機の中で切れたり毛羽立ったりしにくいように、あらかじめ糊で整える準備工程です。
特徴
サイジングの特徴は、織る前の経糸を補強することです。
織機で織るとき、経糸は大きな負荷を受けます。
経糸は、綜絖(そうこう)や筬(おさ)を通り、開口(かいこう)し、緯糸が入り、筬打ちされるたびに、こすれたり、引っ張られたりします。
そのため、糸が弱かったり、毛羽が多かったりすると、糸切れや毛羽立ち、開口不良、織りキズにつながることがあります。
サイジングでは、経糸に糊剤を付けることで、糸を織機にかけても耐えやすい状態に整えます。
主な特徴は以下の通りです。
・織物の経糸に行う準備工程
・経糸に糊剤を付ける
・糸の毛羽を抑える
・糸の強度や耐摩耗性を高める
・織機上での糸切れを減らす目的がある
・開口を安定させる目的がある
・経糸をシート状に通して処理する場合が多い
・糊液、マングル、乾燥、ビーム巻き取りなどと関係する
・製織後には糊抜きが必要になる場合がある
・素材、糸番手、密度、織機、織物用途によって条件が変わる
サイジングは、織るために必要な一時的な補強です。
完成品に糊を残したいから行うのではなく、織る工程を安定させるために行います。
サイジングでは何をしているのか
サイジングでは、多数の経糸を並べた状態で糊剤を付けます。
一本の糸に筆で糊を塗るのではありません。
また、綛染めのように、糸が輪になって束ねられたり、ねじられたりした状態に糊を付けるイメージとも違います。
サイジングで見えているのは、経糸として一本一本が横に並んだ、薄いシート状の糸の集合です。
ここでいうシート状とは、紙や布のように面が一体化しているという意味ではありません。
一本一本の糸は別々に存在しています。
ただし、それらが幅方向にずらっと並び、機械の中を平たい面のように通っていくため、見た目としては薄いシートやカーテンのように見えます。
初心者向けにかなり単純化すると、次のような違いです。
【綛染めの糸】
輪になった糸を束ね、ねじったりまとめたりした状態
【サイジングの経糸】
一本一本の糸が横に並び、薄いシート状に広がった状態
【綛染めの糊付け】
糸束や綛に対して糊を付けるイメージになりやすい
【サイジング】
整経(せいけい)された大量の経糸を、織機にかける前に連続的に糊付けするイメージ
つまり、サイジングの「シート状」とは、糸が固まって一枚の布になっているという意味ではありません。
たくさんの経糸が順番を保ったまま横に並び、反物幅のように広がって、糊液の中を通ったり、ローラーで絞られたり、乾燥され流れていく状態です。
一般的なイメージは次のようになります。
【サイジングの基本的な流れ】
経糸が一本一本並んだシート状で送られる
↓
糊液に通す
↓
マングルなどで余分な糊液を絞る
↓
乾燥する
↓
糸を分ける
↓
織機にかけるためのビームに巻き取る
この流れによって、経糸一本一本の表面に糊が付き、毛羽が抑えられ、織機で扱いやすい状態になります。
サイジングで大事なのは、糊をたくさん付ければよいわけではないことです。
糊が少なすぎると、糸切れや毛羽立ちを抑えにくくなります。
逆に糊が多すぎると、糸が硬くなりすぎたり、開口しにくくなったり、後の糊抜きが大変になったりする場合があります。
つまりサイジングは、経糸を「織れる状態」にするために、糊の付き方を調整する工程です。
糊付けとの違い
サイジングは、広い意味では糊付けの一種です。
しかし、現場で「サイジング」と言う場合は、特に織物の経糸に対する糊付けを指すことが多いです。
糊付けという言葉は、かなり広く使われます。
たとえば、
・糸に糊を付ける
・生地に糊を付ける
・仕上げで張りを出す
・手作業で糊を付ける
・綛の状態で糊を付ける
・経糸を織る前に補強する
など、さまざまな意味で使われます。
一方、サイジングは、主に製織前の経糸準備としての糊付けです。
整理すると、次のようになります。
【糊付け】 糸や生地に糊を付ける広い言葉
【サイジング】 織る前の経糸に糊を付けて補強する工程
【生地への糊付け】 仕上げで張りや風合いを出す目的の場合がある
【糸の糊付け】 糸の扱いやすさや織りやすさを整える目的の場合がある
サイジングの目的は経糸を織機で切れにくく、毛羽立ちにくくすることです。
ITomap的には、糊付けは広い言葉、サイジングは「経糸を織るために補強する糊付け」と理解するとわかりやすいです。
糸染め後の糊付けとサイジングの違い
サイジングがイメージしづらい理由のひとつは、「糸に糊を付ける」と聞いたときに、人によって思い浮かべる光景が違うからです。
特に先染めでは、糸の染め方によって頭に浮かぶ景色が変わります。
たとえば、藍染めや綛染めでは、糸が綛の状態で染められることがほとんどです。
この場合、染めた後の糸を綛のまま扱い、必要に応じて糊を付けるようなイメージがあります。
綛染めの糸は、輪になった糸の束です。
作業中には、糸がまとまり、ねじられたり、束として持ち上げられたりする光景が浮かびやすいです。
一方、チーズ染色では、糸をチーズ状に巻いた状態で染めます。
その後、巻き返し、整経、荒巻、サイジングなどの工程へ進む場合があります。
サイジングでは、糸が綛のような束で見えているのではなく、経糸として一本一本が順番に並んだ状態で見えます。
この一本一本が並んだ薄いシート状の経糸が、糊液の中を通り、ローラーで絞られ、乾燥され、織機用のビームに巻かれていきます。
整理すると、次のようになります。
【噴射式の機械による綛染め】
輪になった糸束を染めることがほとんど
【藍染めなどの綛染め】
糸を煮る、綛ごとに糊を付け、干すという光景になりやすい
【綛の糊付け】
束の状態の糸に処理するイメージになりやすい
【チーズ染色】
チーズ染色用のコーンに巻かれた糸を染め、その後に巻き返しや整経へ進むイメージ
【サイジング】
経糸として一本一本並んだ大量の糸を、薄いシート状に通し、糊を付けて乾燥し、ビームに巻くことが多い
つまり、糸染め後の糊付けとサイジングは、どちらも「糸に糊を付ける」ことがありますが、見えている形状と目的が違います。
藍染めや綛染めの糊付けは、糸の束や綛を扱うイメージになりやすいです。
サイジングは、織機にかける経糸をまとめて準備する、かなり工業的な工程として理解するとイメージしやすくなります。
荒巻(あらまき)・整経との関係
サイジングは、整経や荒巻(あらまき)と関係します。
整経とは、織物に必要な本数の経糸を、順序や長さをそろえて準備する工程です。
荒巻は、整経された経糸を一時的に巻いたビームや、その状態を指して使われることがあります。
ただし、荒巻や整経という言葉の使い方は、工場や産地、設備によって異なる場合があります。
サイジングでは、荒巻ビームなどから経糸を引き出し、糊液を通し、乾燥し、織機にかけるためのビームに巻き取る流れが関係します。
イメージとしては、次のようになります。
【荒巻からサイジングへ進むイメージ】
荒巻ビーム
↓
多数の経糸を一本一本、横に並んだシート状に引き出す
↓
糊液を通す
↓
マングルで絞る
↓
乾燥する
↓
糸を分ける
↓
織機用のビームに巻き取る
ここで重要なのは、サイジングが「糸の束にざっくり糊を付ける工程」ではないことです。
経糸として並んだ多数の糸を、織機にかけられる状態へ整える工程です。
糸一本一本に糊が付きますが、作業の見え方としては、一本ずつ手で塗るのではなく、並んだ経糸のシートを機械に通して処理するイメージです。
綛染めのように、束になった糸をまとめて扱う光景とは違います。
サイジングでは、経糸が順番を保ったまま並び、後で織機にかかることを前提に処理されます。
この視点を持つと、サイジングがかなり具体的に見えてきます。
なぜ経糸に糊が必要なのか
経糸に糊が必要なのは、冒頭に書いた通り、織機の中で経糸が大きな負荷を受けるからです。
織機では、経糸が何度も上下に開口し、その間に緯糸が入り、筬で打ち込まれます。
その間、経糸は綜絖や筬とこすれ、張力を受け、繰り返し動きます。
糸が弱い状態のままだと、
・糸切れが増える
・毛羽が立つ
・糸同士が絡みやすくなる
・開口が悪くなる
・緯糸が入りにくくなる
・織りキズにつながる
・織機の稼働が安定しにくくなる
といった問題が起こる場合があります。
サイジングでは、糊剤によって糸の表面をある程度まとめ、毛羽を抑え、摩擦に耐えやすい状態にします。
つまり、サイジングは、経糸を「織機に耐えられる糸」に近づける工程です。
ITomap的には、サイジングは「糸を固める工程」ではなく、「経糸が織機の中で切れたり毛羽立ったりしにくいように、織るための状態へ整える工程」と理解するとわかりやすいです。
サイジングと糊抜きの関係
サイジングで付けた糊は、織るためには必要ですが、完成品にそのまま残したいとは限りません。
特に染色や仕上げ加工を行う場合、糊が残っていると染まりや風合いに影響することがあります。
そのため、製織後の生地では、後工程で糊抜きを行うことがあります。
糊抜きとは、サイジングや糊付けによって付いた糊を取り除く処理です。
整理すると、次のようになります。
【サイジング】 織る前に経糸へ糊を付ける
【製織】 糊で補強された経糸を使って織る
【糊抜き】 織った後に不要になった糊を落とす
【精練(せいれん)】 油分や不純物を落として染色や加工しやすい状態にする
サイジングは、織るために必要な工程です。
糊抜きは、織った後に次の染色や整理加工へ進むために必要になる場合がある工程です。
つまり、サイジングと糊抜きはセットで理解するとわかりやすくなります。
織るために糊を付ける。
染めるために糊を抜く。
この流れを理解すると、織布と染色整理加工のつながりが見えやすくなります。
ITomap的理解│初心者が誤解しやすいポイント
初心者が誤解しやすいのは、サイジングを「糸に糊を付けるだけ」と考えてしまうことです。
たしかに、サイジングでは糊を付けます。
しかし、目的は糊を付けることそのものではありません。
目的は、経糸を織機で織れる状態に整えることです。
もうひとつ誤解しやすいのは、糸染め後の糊付けとサイジングを同じ映像で考えてしまうことです。
綛染めや藍染めでは、糸の束のまま煮たり、染めたり、必要に応じて糊を付けたりするイメージがあります。
この場合、頭の中に浮かびやすいのは、輪になった糸の束、ねじられた綛、まとまった糸を持ち上げるような光景です。
一方、サイジングでは、整経された大量の経糸が一本一本横に並び、薄いシート状になって、糊液、マングル、乾燥を通っていく映像が近いです。
つまり、サイジングは、
・一本ずつ糊を塗る作業ではない
・綛の束にざっくり糊を付けるだけの作業でもない
・経糸として並んだ大量の糸を、織れる状態へ整える工程
です。
ITomap的には、サイジングは「糸の糊付け」ではなく、「織機にかかる経糸を、摩擦と張力に耐えられる状態へ整える工程」と理解すると、かなりイメージしやすくなります。
現場での使われ方
現場では、サイジングは経糸準備や織布の話の中で使われます。
たとえば、
・サイジングに出します
・サイジングします
・糊を付けます
・経糸に糊を付けます
・荒巻からサイジングします
・サイジング後にビームへ巻きます
・糊が強すぎます
・糊が甘いです
・糊付きが悪いです
・毛羽が抑えられていません
・経糸切れが多いです
・開口が悪いです
・糊抜きが必要です
・この糸はサイジングが難しいです
といった形で使われることがあります。
現場では「サイジング」と言う場合もあれば、「糊付け」と言う場合もあります。
ただし、サイジングと聞いたときは、特に経糸を織るために補強する工程をイメージすると、話がつながりやすくなります。
サイジングの話が出たときは、
・経糸に対する糊付けなのか
・生地への仕上げ糊なのか
・糸染め後の糊付けなのか
・荒巻や整経後の工程なのか
・糊抜きが後で必要なのか
を確認すると理解しやすくなります。
補足
サイジングの条件は、糸や織物の種類によって変わります。
糸番手、素材、撚り、毛羽の多さ、経糸密度、織機の種類、織物組織、製織速度などによって、必要な糊の種類や量、乾燥条件が変わる場合があります。
サイジングで見るべきポイントには、次のようなものがあります。
・糸が切れにくくなっているか
・毛羽が抑えられているか
・糊が付きすぎていないか
・糊が少なすぎないか
・乾燥が十分か
・糸同士がくっつきすぎていないか
・糸が分けやすいか
・開口しやすいか
・後の糊抜きに支障がないか
サイジングは、強く糊を付ければ良いというものではありません。
糊が強すぎると、糸が硬くなりすぎたり、開口しにくくなったり、風合いや糊抜きに影響したりする場合があります。
一方、糊が弱すぎると、経糸切れや毛羽立ちが増え、織機が安定しにくくなる場合があります。
そのため、サイジングは、織るための補強と、後工程での抜けやすさのバランスを見る工程です。
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用語
・糊付け
・糊抜き
・精練
・経糸
・緯糸
・織物
・織機
・マングル
・乾燥
・生機
・染色
・整理加工
まとめ
サイジングとは、織物を織る前に、経糸へ糊剤を付けて、糸の毛羽を抑えたり、強度や耐摩耗性を高めたりする準備工程です。
広い意味では糊付けの一種ですが、現場でサイジングと言う場合は、特に織る前の経糸に対する糊付けを指すことが多いです。
綛染めや藍染めなどの糸染めでは、糸の束や綛の状態で糊付けする光景を思い浮かべることがあります。
この場合、糸は輪になり、束になり、ねじられた状態で扱われるイメージになりやすいです。
一方、サイジングでは、整経された多数の経糸が一本一本横に並び、薄いシート状になって、糊液、マングル、乾燥を通り、織機にかけるためのビームに巻き取られるイメージで理解するとわかりやすくなります。
ここでいうシート状とは、糸が一枚の布になっているという意味ではなく、一本一本の経糸が順番を保ったまま、平たい面のように広がって流れている状態です。
サイジングの目的は、糊を付けることそのものではありません。
経糸が織機の中で切れたり毛羽立ったりしにくいように、織れる状態へ整えることです。
また、サイジングで付けた糊は、製織後の染色や整理加工に進むために、後で糊抜きされる場合があります。
ITomap的には、サイジングは「糸に糊を付ける工程」ではなく、「織機にかかる経糸を、摩擦と張力に耐えられる状態へ整える工程」と理解すると、糊付け、整経、荒巻、糊抜きとの関係が見えやすくなります。


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